はしがき

 私が初めて税法を学んだのは北野弘久教授の集中講義からである。以来仕事を通じて税法を勉強してきた。大学教員時代論文を書いたり、頼まれて原稿を書いたり、研修の講師を務めたりしてきた。そこでそういう考え方もあるのだなと少しでも後世の参考になればと考えるようになった。

 今は廃刊となった旬間国税解説速報において国税不服審判所の裁決事例を中心に執筆してきたものを寄稿集として、千葉県税理士会が開催する税法研究会での講演したものを研修資料集として、千葉経済論叢(千葉経済大学の論文集)など過去に執筆したものを論文集として分類した。これら以前に執筆したものを加筆修正して最新版としました。

 一応便宜的に所得税、法人税と分類してみたが関連するものがあったりして、所得税の話の途中に突然法人税の話が出てきたりして論理一貫していない点はお許しいただきたい。これは取引の相手方が個人か法人かによって税務上の取扱いが異なるということ、他分野ではどう取り扱われるかを考えることは有益であることからきている。

 裁判所に出向して学んだことは、裁判官は世間に通用する常識に基づいて判断する。極端なことを言えば結論が先にあり理由付けは法律等に沿って行う。私が判断を下す場合も先ずは常識的に考えることによって、裁判になっても勝てるようにすることである。ここでいう常識は税務署の常識や業界の常識ではなく、裁判になっても勝てる常識であり、通達によく出てくる「社会通念」である。税務判決で国側が負けた部分について通達を修正しており、長年の積み重ねでよく出来ているが、それでも筆者が納得できないところもあり、必ずしも常識=通達ではない。

 大学で学生に論文指導をしていて筆者自身が学んだことは学問に正解はないということである。少数意見も尊重されるべきである(北野弘久教授とは見解を異にすることが多かったが、そういう考え方があるのかという意味で参考となった)。少数意見も時代の変化により判決で認められるようになり、法令や通達の改正に結び付いていく可能性もありうる。

 この拙稿が少しでも税法を勉強する方のお役に立てれば幸いである。